さとさまの日常

京都のROCK BAR DIRTオーナー、さとさまの日々の覚え書きを書き記す。

私の好きなヘヴィメタル

今から10~15年程前。

メタルという単語はとにかくダサいものとして扱われていた。

私が中高生の頃は特にその傾向が強かったように思う。



グランジがメインストリームとなった90年代始め。

一つ前のムーヴメントであったヘヴィメタルは当然ダサいものであった。

しかし94年にカート・コバーンが自殺を果たした頃にはグランジムーヴメントも沈静化しつつあった。


グランジの衰退と時期を同じくしてちゃんと新しいメタルはシーンに帰って来くる。

それがラップメタル、ニューメタルと呼ばれたメタルであった。

代表的なバンドはRAGE AGAINST THE MACHINEKORNLIMP BIZKIT等である。

レイジは自分達の音楽性をラップメタルと表現していたし、KORNメタリカからの影響をはっきりと口にし、リンプは80sメタルをはっきりと肯定していた。

なのに、である。

日本では彼らはラウドロックという括りで売り出されていた。

メタルはダサかったからである。

メタルじゃないよ、安心してね。

これを聴いても君はダサくないんだよ。

そういう感じだったのである。

GREEN DAYとか聴いてるやつがレイジ聴いててもメタルダセェwwとか言えちゃったのである。

今ではちょっと考えにくいことではあるが、ほんとにそうだったのだ。



こういう事態になったのはメタル側にも問題はあったように思う。

90年代になっても日本のメタルファンはメタルに対して80年代の幻想を未だに引きずっていた。

それはもうBURRN!とか見てると顕著であった。

HELLOWEENやBLIND GURDIANといったバンドが表紙を賑わせていた。

そう、メタルファンは自ずからダサい方へダサい方へと食指を伸ばしていたのだ。

個人的にはメロスピはちっとも好きじゃなかった。

だってダセェんだもん。

アグレッションもスピード感もないと思っていた。

PANTERAとかががんばってるのがとてつもなく頼もしかった。


とまぁそういう経緯があって、KORNとかも好きだったのにメタルが好きと言うとなんかもっさい音楽が好きだという烙印を押されていたのだ。

実際自分もKORNとかLIMPをメタルと胸を張って言えなかった。

SLIPKNOTだって最初出て来た時は興奮したが、なぜか僕ら(メタルファン)の手からは取り上げられてしまった。

もう戻ってきてるけど。

とにかく。

メタルファンは弾圧されていた。

メタルファンでいることは戦うことと同意義だった。



世界的にメタルが人気を盛り返してきて、さすがに無視できなくなったか、もうメタルはダサくなくなったのかは知らないが、2000年代に入ってきた頃からメタルという言葉は使われだされ、2000年代も後半になる頃にはKORNが普通にメタル雑誌に載るようになった。

しかしそれまでは本当にメタルファンをやることは辛く、厳しいことだったのである。

ほとんどの大物はいなくなっていた。

ほんとにHELLOWEENが希望の星だった。

98年にJUDAS PRIESTが活動を再会した時の嬉しさと言ったら。

99年にIRON MAIDENがリユニオンした時の興奮といったら。

もうそれは筆舌に尽くしがたいものだったのである。

KISSやBLACK SABBATHがリユニオンして、おっさん達がカムバックしてきただけでも何か心強かったのだ。


結局何を言いたいかというと。

お前らそれメタルだろ、と言いたかったのである。

お前の聴いてる音楽、メタルだから。

と言いたかったのである。

DISTUBED?

メタルじゃん!

と私は言いたかったのだ。



私はこんなにもオープンにメタル好きを公言できる日が来てとてつもなく嬉しい。

これは我々が勝ち取った権利なのだ。

メタル冬の時代を乗り越えた我々の成し遂げた偉業なのだ。


その分昨今のメタルファンには苦言も呈したい。

メタルの中の特定のジャンルだけに引き蘢ってるだけなのにメタルをわかったように語るのはやめて頂きたい。

ハードロックとヘヴィメタルの関係性も知らずに語ることを辞めて頂きたい。

こんなことが続いていては各個撃破されてしまう。

メタルという旗印のもと、我々はユナイテッドしなくてはならないのだ!