JUSTICEとGUILTY
GLAYというバンドが好きです。
世間的な認識がどうなのかよくわかりませんが、今現在も毎年のように年間50本以上のツアーをやっているのに関わらず、ファンクラブにでも入らなければチケットが取れないバンドは他に知りません。
GLAYというバンドはご存知の通りプロダクションから独立した折に色々あり(平たく言うとモメたわけですが)一時期メディアへの露出が極端に減りました。
しかし現在では自前のプロダクションを運営して活動しているタフで、かつファンに誠実なバンドなのです。
他のバンドとの違いはこの辺りにあらわれていると個人的には思うわけで、大人の事情に左右されにくいことが作品のクオリティー、または表現の自由さ、明確さへと繋がっていると思います。
しかしながら活動や作品のクオリティーに対してなんかナメられてんじゃないの、と思う次第であり、先日発売された新作2枚を大いに語らせて頂きたい所存であります。
なげーのは読みたくねーよ、という向きには、とりあえず結論から。
とりあえずお前はGUILTY買っとけ。
まずご存知の方も多いと思いますが、この作品は2枚同時リリースという形態を取っています。
なぜそういう形になっているのか?
今まで通りの佐久間正英さんによるプロデュース作品とGLAYによるセルフプロデュース作品だから分けてある、というのが一般的な考え方だと思います。
Twitterや佐久間さんのブログ、特典のDVDを見ると2010年頃からGUILTYの制作が始まり、その後JUSTICEを制作しています。
JUSTICEは新しいGLAY、これからのGLAY、そういうテーマがあるのに、なぜJUSTICEが11thでGUILTYが12thアルバムなのか。
ここは聴き込んでもはっきりとはわからなかったです。
言葉のノリとかかもしれません。
なのでまずは12thアルバムであるGUILTYから書いていきたいと思います。
GLAYの集大成と位置づけられるこの作品、まさにファンが思い描くGLAY像が詰まったアルバムと言えます。
しかし過去の焼き直し等ではなく、しっかりと前進している。
1曲目の Red moon & Silver sun ~ My Private“Jealousy” はオーケストラによるイントロダクションから始まり疾走感のある曲へと繋がっていく、まるでヘヴィメタルバンドのようなオープニング。
こんなにスリリングなオープニングを演出しているアルバムはそうはないです。
3曲目のFACTORYなどで感じるのは、GLAYのスタンスはアメリカのBON JOVIのようになってきているのだな、ということ。
みんなのヒーローとして在りながら、絶対に日常的な感覚から乖離していかない。
みんなの代弁者としてそこにいる、そういうスタンスを強く感じます。
そしてなによりGLAYというバンド、TAKUROというコンポーザーが最も成長していると感じさせるのは8曲目のBible。
この曲のもつテーマ、歌詞の内容は今後の日本のロックシーンが絶対に必要としている部分ではないかと思います。
左翼的な視点でのポリティカルソングは震災以降沢山耳にしてきましたが、普通の人が生きる日々、日常を起点にした作品をGLAY以外に聴いたことがありません。
以前なら、もしかしたらもっとぼかした表現になっていたかもしれない。
だけどもうGLAYにはそれをはっきりと言える強さが備わっているのだな、と痛感しました。
サウンド的なお話をさせてもらうと、本当にカッコ良い音が録れているなと思います。
以前からGLAYのアルバムは国内アーティストの中でも質が高かったのですが、GUILTYは過去のどのアルバムよりもリアルなサウンドに仕上がっています。
エノキマイクと言われるマイクを使ったことやギターの録音にプラグインを多用していることが理由なのかなと思います。
プラグインというのは、コンピュータ上のアプリですね、簡単に言うと。
とにかく音が太いです。
そしてリアル。
存在感が半端ないです。
自分もギター弾きの端くれですが、こんなに太くしっかりした音が録れるようになりたいです。
アレンジも今回はそうとう練っているな、という印象です。
特にギターワークは本当に素晴らしいです。
勉強になります。
意外だったのはTAKUROさんが結構がっつりソロを取っていたりすること。
リードはHISASHIさん、というイメージがあったので少し驚きました。
佐久間さんによるものと思われるウワモノもとても綺麗です。
全体の印象も多彩な楽曲が並ぶのに統一感があり、ミックスの方向性もしっかりとしたヴィジョンに裏打ちされているようです。
前作「GLAY」はかなり穏やかな作風となっていたので、今作の音はある種意外であり、ファンが求めていたものでもあります。
今からGLAYを聴くなら間違いなくこのアルバムをお薦めします。
つづいて11thアルバム、JUSTICE。
上にも書いた通り、このアルバムは初のセルフプロデュース作品となっています。
メンバーがやりたっかたであろうこと、作りたかったであろう音が詰め込まれているアルバムです。
その分アルバムを通したサウンドの一貫性に欠けるきらいがあります。
1曲目WHO KILLED MY DIVAから過去になかったようなスタイル。
こういうミドルテンポの風変わりな曲を持ってくるというのは、逆に攻めてるな、と感じますね。
歌詞もいきなり攻めてます。
風刺の効いた1曲に仕上がっています。
また、この作品ではメインというか、主軸になる曲をJIROさんとHISASHIさんが多く手がけているので、TAKUROさんが意外性のある曲を書いているのも特徴です。
4曲目のLOVE IMPOSSIBLEはEXILEとのコラボレーション用に書いた1曲らしく、ファンキーな曲に仕上がっていますし、アルバムのラストを飾るSMILEはポリティカルな歌詞のアンセムソングになっています。
余談ですが、尖閣諸島という言葉を歌詞に書いているバンドが中国でライヴをやる、というのは凄いことなのではないでしょうか。
音楽家としてのスタンスは尊敬しています。
変わりダネばかりではなく、2曲目のROUTE 5 BAYSHORE LINEではGLAYらしいミドルテンポのナンバーを、7曲目のJUSTICE [FROM] GUILTYではこれぞGLAYというロックチューンが聴けます。
アルバムのハイライトはJIROさん作の運命論ではないでしょうか。
メロディ自体は昨年夏の長居スタジアムからあったようで、HOWEVERの最後の部分でメロディが出てきます。
この曲もアンセムソングとなっていくのではないでしょうか。
こういう曲を書ける人がメインソングライターの他にいる、というのはとてつもなく強いと思います。
サウンド的には、エンジニアの小西さんというキーパーソンがいるものの、1曲毎に方向性が違うという印象です。
より実験的な音作りであったり、声の音も、ああ、TERUさんはこういう音が好きなんだな、といった感じで、バンドの個性が前面に押し出されていると思います。
ある意味Bサイドコレクションのような印象です。
この実験的、個性的な音作りは今後継続されるのかはわかりませんが、ソロワークを集めたようにならないか少し心配ではありますが、バンドとしてのスタンス、歌っていくべきテーマが明確なので、メンバーの脱退なんかが無い限りGLAYというバンドは揺らがないと思います。
とまぁざっくりと書かせて頂きました。
なんかね、歌詞のテーマや活動の方針的にもっとネットでウケそうなのにな、と思うわけですよ。
こんなにリアリティのある大物バンドってあんまりないですよ。
ちゃんとカッコつけてくれるし、ロックバンドをやってくれてる。
間違いなく良いバンドですよ。
みんなもっと聴くべき。
今の音に触れてください。