さとさまの日常

京都のROCK BAR DIRTオーナー、さとさまの日々の覚え書きを書き記す。

裏L.A.メタル探訪〜ヘアメタルの90'sを再検証〜

80's再評価の波はNU METALがシーンに台頭してきた頃から行われていたわけだが、それはKING OF POP、マイケル・ジャクソンの死去により決定的となったと思う。

その文脈の中で、ヘアメタル勢も評価を取り戻したようだ。

きらびやかでド派手、かつテクニカルなロック。

結局人々は音楽に楽しむことを求めていた。

だが、しかし!

今回は、敢えて裏L.A. METALの入り口にみなさんを誘おうと思う。

なぜなら、普通に名盤とかやっても面白くないから!

グランジオルタナが猛威を振るっていた90年代初頭、ヘアメタルバンド達は時代に適応すべく切磋琢磨していた。

新世代のメタル、PANTERAがカッコ良過ぎたことと、METALLICAがスタイルをヘヴィ&グルーヴィに変化させ大成功したことで、ヘアメタルバンド達も一気にそっち方向へと舵を切ったのだ。

そして、ほぼ全てのバンドが失敗に終わっている!

結果、あの時代のヘアメタルバンドは全然面白くないよね、そう世間の評価は定まった。

だが、しかし!(二回目)

本当にあの時代のヘアメタルバンドはつまらないのか?

グランジオルタナブームの終焉から20年経った今。

もう一度真剣に向き合ってみようと思う。



グランジオルタナティブの分類


グランジオルタナティブと一括りにされているが、そもそもこのジャンルはかなり雑多なスタイルが当てはまる。

オルタナティブロック、つまり、型にはまらないロックは大体がそこに分類された。

NIRVERNAはヘヴィなパンク、PEARL JAMは70'sライクなアメリカンロック、SOUNDGARDENはグルーヴメタルからニューウェイヴ的なサウンドまで幅広くこなし、ALICE IN CHAINSは新世代のメタルサウンドを提示していた。

グランジオルタナティブを代表する4バンドですら、音楽的に纏めることは難しく、むしろ扱う題材等に共通点がある。

その結果、インダストリアルと呼ばれたNINE INCH NAILSやポップスに近いGARBAGE、分類の難しかったR.E.M.等も含まれることとなった。

筆者は、今回ピックアップしたアルバムを全て聞き直したのだが、90'sヘアメタルバンドの内容は意外と多様性を持っていることに驚いた。

十把一絡げに重くてかったるいという評価は間違っていると思う。

なので、今回は解説や感想の他に特徴が一目でわかるような、


サウンド……音的にどの辺りに分類されるのか?

・楽曲の出来……ミュージシャン視点でみた楽曲の完成度は?

・オススメ度……聴いてみる価値はあるのか?



の3つを各アルバム毎につけていきたいと思う。

では、お付き合い願いたい。




MOTLEY CRUE / MOTLEY CRUE(1994)



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01.
Power To The Music
02.Uncle Jack
03.Hooligan's Holiday
04.Misunderstood
05.Loveshine
06.Poison Apples
07.Hammered
08.Til Death Do Us Part
09.Welcome To The Numb
10.Smoke The Sky
11.Droppin Like Flies
12.Driftaway


80'sメタルの権化、MOTLEY CRUE。

彼らこそが80'sロックの究極系であると言っても過言ではないだろう。

その彼らが、ハイトーンで美形のヴィンス・ニールからワイルドで荒々しいジョン・コラビにヴォーカルを変えて出した6thアルバムである。

結論から言えば、今回聴いた中では出色の出来だった。

そもそも、リーダーのニッキー・シックスの発言等は元々非常にグランジ的であり、デカダンで破滅的なそのライフスタイルは絶望の裏返しであった。

彼らのリアルさは作られたものではなく、貧困層から成り上がってきたならず者のもつ迫力だったのだろう。

1989年発表の「Dr.FEELGOOD」で頂点を極めた彼らだが、その時期にドラッグやアルコールから足を洗い、楽曲の作りや演奏力、サウンドの良さは劇的に高まっていた。

元々スピードやテクニックで押すスタイルでなかったこともこの作風へと繋がっていると思う。

ヘヴィかつグルーヴィ、リフで押しまくってくるかと思えば美しいメロディが出て来ることも。

ニッキー・シックスは希代のメロディメイカーだと思うのだが、この作品でもその能力は遺憾なく発揮されている。

リズムの作り、ストリングス等の楽曲アレンジ、このアルバムだけで聴けるツインギターの使い方等も特筆に値する。

素直にカッコ良いのだ。

今の時代からみれば、アメリカでゴールドディスクを獲得していること自体作品の純粋な良さを物語っているのかもしれないが、筆者はもっと評価されるべきという判断を下したい。

アルバムが発売された1994年は、カート・コバーンが自殺をし、グランジブームは終焉を迎えようとしていた時期。

シーンにはRAGE AGAINST THE MACHINEKORNの足音が聞こえ始めていた。

もし、あと1年早く出ていたら。

バンド名を変えていたら。

いっそヴィンス・ニールのまま出していたら。

たらればは通用しない世界だが、そうなっていれば評価は変わっていたかもしれない。

いや、しないか。

ちなみに、この次のアルバム「GENERATION SWINE」(1997)はオルタナティブロックであり、GARBAGE辺りと比較されそうなポップさがある。

こちらも出来はとても良いのだが、毎回のように音楽性を変える節操のなさにファンは戸惑ったことだろう。


サウンド……グランジ/グルーヴメタル/アメリカンハードロック

・楽曲の出来……☆☆☆☆☆

・オススメ度……☆☆☆☆☆




RATT / RATT(1999)



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01.Over The Edge
02.Live For Today
03.Gave Up Givin' Up
04.We Don't Belong
05.Breakout
06.Tug Of War
07.Dead Reckoning
08.Luv Sick
09.It Ain't Easy
10.All The Way
11.So Good, So Fine


MOTLEY CRUEと言えばRATT、なのだが、今回のこのアルバムは取り上げるか少々迷った。

なぜなら発売が1999年と他のバンドとは全く事情が異なるからである。

しかしながら、MOTLEY CRUEから始まり、裏L.A. METALと銘打った以上、やらないわけにもいかない。

L.A. METALムーヴメントを代表する彼らだが、4th「REACH FOR THE SKY」(1988)辺りから人気が下降し始め、グランジブームもクソもなく90年代始めに解散してしまう。

その後97年に再結成を果たした彼らが、久々に出したアルバムがこれだ。

外部ライターを使っている為に楽曲のクオリティは高いのだが、普通である。

80'sの派手さが影を潜めた、普通に心地よいハードロックアルバムだ。

いや、本当に曲の出来は良いと思う。

アレンジやメロディは良いものが沢山あるし、ギタリストのウォーレン・デ・マルティーニの成長も著しい。

しかしながら、歌がそこまで上手いわけではなく、というよりそもそもスティーブン・パーシーは味や雰囲気、個性的、等と呼ばれるスタイルを楽しむタイプのヴォーカリストなわけで。

作曲陣や曲の方向性等から推察するに、マネジメント側はAEROSMITH的なヒットを狙っていたと思われるのだが、無理があるように思う。

重ね重ね言うが、アルバムとしての出来は悪くない。

だが、それは接頭語に「普通に」というのが付いてくる。

楽曲がそれなりのクオリティなのにあまり良い評価を与えられないというのは、中々おもしろい経験だった。

2010年にまた再結成をし、「INFESTATION」を発表しているが、そちらは往年の「らしい」スタイルであり、エネルギッシュな演奏等内容的には充実している。


サウンド……普通の歌モノハードロック

・楽曲の出来……☆☆☆

・オススメ度……☆




DOKKEN / DYSFUNCTIONAL(1995)



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01.
Inside Looking Out
02.Hole in my Head
03.Maze
04.Too High to Fly
05.Nothing Left To Say
06.Shadows of Life
07.Long Way Home
08.Sweet Chains
09.Lesser of Two Evils
10.What Price
11.From the Beginning
12.When the Good Die Young


MOTLEY CRUE、RATTとくればDOKKENしかない。

DOKKENと言えばスイートでメロディアスな歌とワイルドでテクニカル、個性的なリフが特徴のバンドだが、ヴォーカリストでリーダーのドン・ドッケンとギタリストのジョージ・リンチの仲が悪く、89年に解散してしまう。

その後、和解し再結成。

1995年にこのアルバムを発表する。

メンバーが少し大人になり、良い雰囲気で作ったとされるこのアルバム(内情は違ったようだが)今回聴いた中では1、2を争う地味さであった。

要は90'sのサウンドで70'sハードロックをやっているのだが、とにかく地味なのだ。

ハイトーンを意図的に抑えているのかにメロディに抑揚が乏しく、むしろ音域を限定することで曲の作りはかなり苦心したのでは、と思える。

アレンジもわりとシンプルめ。

アルバム通して聴くと割に多彩な作風なのだが、前半にそういった曲が並ぶのでよりそう感じるのかもしれない。

演奏も上手いので安定しているが、ドラムのミック・ブラウンは元々から前ノリ系のドラマーなので、グルーヴィさという部分ではあまり合っていない。

ギターは伸び伸びと弾いており、ジョージ・リンチが好きなら聴く価値はある。

Too High To Fly等、80年代にやっていても良いような曲もあるにはあるし、速い曲もある。

今から聴けば充分に聴ける内容ではあるが、当時期待を込めて聴いたファンはさぞかしかったるかったことであろう。

良いリフもある。

良いメロディもある。

らしい曲やギターワークもある。

ただ、地味である。

この次のアルバム「SHADOW LIFE」ではヘヴィなグルーヴメタルに接近するが、やはりこちらもジョージが好きなら聴いても良い、という内容。

その後ジョージ・リンチが抜けてからのDOKKENは80'sのような音楽性を取り戻したが、どこか毒味に欠けるサウンドになった。


サウンド……ハードロック

・楽曲の出来……☆☆

・オススメ度……☆☆




WINGER / PULL(1993)



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01.Blind Revolution Mad
02.Down Incognito
03.Spell I7m Under
04.In My Veins
05.Junkyard Dog(Tears On Stone)
06.The Lucky One
07.In For The Kill
08.No Man's Land
09.Like A Ritual
10.Who's The One


WINGERと言えば、ヘアメタルの代名詞的存在である。

要は、グランジ全盛時代にダサいメタルの代表としてよくイジられていたバンドであり、ダサさの象徴として祭り上げられていたのだ。

その理由はと言えば、まずルックスが良かったこと。

そして、ボー・ヒルというこれまたヘアメタルサウンドを代表するプロデューサーがキラキラなサウンドを構築していたことが理由だと思う。

しかしてその実体はどうだったのか、と言えば、実はそうでもない。

メンバー全員が既にスタジオミュージシャンやバックバンドのメンバーとして実績があり、楽器の演奏は上手い。

楽曲に関してもシンプルでトラディショナルなロックンロール主体のモノが殆どだ。

随所に盛り込まれるアレンジや各メンバーの技量からすると、もう少し派手というか、凝った曲を演っても良いようなものなのだが、そこに拘りが感じられるバンドだった。

そういえば技量があるがあえてシンプルなロックンロールに拘ったバンド、というとMR.BIGを思い出す。

要はMR.BIGから灰汁の強い、失礼、個性的な部分を抜いた感じであった、と捉えて頂くとわかりやすいと思う。

で、今回取り上げるこのアルバム。

グランジ全盛の1993年にリリースされ、ダークだ、ヘヴィだ、と物議を醸したアルバムなのである。

一聴してまず思うのは、1st、2ndと一体どう違うのかわからない、ということだ。

相変わらず楽曲の主軸はトラディショナルなスリーコードロックンロールであり、メロディも基本的には同じようなものだ。

ダークだ、という指摘についてはプロデューサーが交代した結果でしかないように思う。

ギターは少しヘヴィになったが、分厚いコーラスワークや空間系のエフェクトを多様するのはボー・ヒルの特徴だ。

それが無くなっただけではないか。

元々セッションマン出身ということもあり、リズム隊も優等生的で非常にコンパクトなサウンドに纏められている。

つまり、重さを感じることは殆どない。

アルバムを通して聴くとシリアスな側面を感じるが、いかにもシンプルでストレートなロックンロールアルバムだと思う。

このアルバムにソッポを向いたファンは、結局の所WINGERそのものではなく、ボー・ヒルのプロデュースを含むキラキラサウンドが好みであったのだろう。

WINGERファンを自任するなら、もう一度このアルバムを手にとってみるべきだ。


サウンド……ストレートなロック

・楽曲の出来……☆☆

・オススメ度……☆☆




DEF LEPPERD / SLANG(1996)



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01.
Truth?
02.Turn To Dust
03.Slang
04.All I Want Is Everything
05.Work It Out
06.Breathe A Sigh
07.Deliver Me
08.Gift Of Flesh
09.Blood Runs Cold
10.Where Does Love Go When It Dies
11.Pearl Of Euphoria


80'sメタル、MTVブームの火付け役、DEF LEPPARD

80年代に天文学的なセールスを上げた。

常々思うのだが、ヴォーカリストのジョー・エリオットの時代を読む力はとても優れている。

このアルバムは1996年にリリースされており、グランジのムーヴメントは完全に終息していた。

あえてこの時期を狙ったのだとすれば非常に賢明な選択だったと思う。

しかし、このアルバムの内容は商業的には完全に失敗だったと言わざるを得ない。

1993年、グランジ全盛時代にリリースされた未発表曲集「RETRO ACTIVE」はシングルヒットも生み、アメリカでプラチナムを獲得。

1995年にリリースされたベストアルバム「VAULT」はなんとアメリカで400万枚以上の売り上げがあった。

この流れの文脈を読んでわかるのは、グランジの風が吹き荒れる中にあっても80's的な、DEF LEPPARDらしいものをファンは求めていたということだ。

つまり、DEF LEPPARDのファンは“時代”とは既に乖離していたのだ。

こういった流れを一度横に置いておいて、もう一度このアルバムに収められた楽曲を聴いてみたい。

改めてこのバンドのソングライティング能力、アレンジの上手さ、細やかなサウンドの作り等には圧倒される。

あれだけのヒットを飛ばしたのはフロッグではなかった。

ドラマーのリック・アレンが事故で片腕を失ったことにより早くから電子ドラムを使っていたことも幸いし、デジタルな味付けもすんなりと聴ける。

楽曲の方向性はオルタナティブロックやポストグランジと呼べるようなもので纏められており、時にはオルタナポップと表現しても良いような曲もある。

本国イギリスでは既にグランジに対するカウンターとしてブリットポップが大流行していたが、DEF LEPPARDは敢えてアメリカに標準を合わせていたであろうことが伺える。

80'sのハッピーな部分を極限まで濃縮したような前作、「ADRENALIZE」(1992)からの落差を考えればとんでもない触れ幅なのだが、それ自体がDEF LEPPARDのポテンシャルの高さを示している。

オルタナとして聴いても、充分に聴けるクオリティだ。

THE SMASHING PUMPKINS辺りを狙っていたのだろうか。

なんにせよ、96年という時代が求めたサウンドであったことは間違いない。

誤算だったのは、アメリカへもブリットポップは飛び火しつつあったことだろう。

アメリカでもGARBAGEやTHIRD EYE BLIND等、オルタナバンドもかなりポップなものが出てくることになるし、メロコア/ポップパンクのムーヴメントも起こりだす。

結局、MOTLEY CRUEにせよDEF LEPPARDにせよ、トレンドに追随を始めた時点で勝負は決まっていたのだろう。

アルバム単位で聴いた時に、このアルバムは間違いなく出来が良く、曲も良いし、演奏もツボを抑えていて心地良い。

アレンジや楽曲の作りは参考になる部分も多い。

なまじ時代を読む力があったために、ヒットしなかっただけだ。

次作「EUPHORIA」では楽曲のモダンさはそのままに80's的なサウンドメイクをもう一度取り入れた。

これが96年という時代に出ていれば、プラチナム到達もあったのではないか。

ようやく最近になってDEF LEPPARDは時代よりもファンを対象にした活動へとシフトしている。

ジョー・エリオットの時代を読む能力なら、若いバンドのプロデューサーをやってもおもしろそうだが。


サウンド……オルタナティブ/ポストグランジ

・楽曲の出来……☆☆☆☆☆

・オススメ度……☆☆☆☆




SKID ROW / SUBHUMAN RACE(1995)



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01.My Enemy
02.Firesign
03.Bonehead
04.Beat Yourself Blind
05.Eileen
06.Remains To Be Seen
07.Subhuman Race
08.Frozen
09.Into Another
10.Face Against My Soul
11.Medicine Jar
12.Breakin' Down
13.Ironwill


ヘアメタル勢としては最後発のバンドと言える、SKID ROW

ガンズを筆頭とするストリート指向のメタルバンドだ。

歌詞の内容もデビュー当時からシリアスなモノが多く、銃社会の問題を扱っていたり、ストリートに生きる若者の叫びをストレートに表現していた。

もともとヘヴィな音像であったが2nd「SLAVE TO THE GRIND」(1991)ではヘヴィさやスピード感は増し、パンキッシュな曲等も盛り込み音楽的な拡散も見せ、アルバムは全米1位に。

そして今回取り上げる3rd「SUBHUMAN RACE」である。

ヴォーカリストのセバスチャン・バックが作曲に関わり始めたことでよりヘヴィかつグルーヴィな方向へと進んだと言われる本作。

具体的に何が変わったか、と言えば、メタルっぽいリフやメロディが減少して粘っこいリフやメロディが増えたということ。

まぁはっきり言ってセバスチャン・バックが関わっていない曲がSKID ROWっぽくてカッコ良かったりする。

こういう作りのはっきりしたアルバムは扱いに困ったりもするのだが、敢えてセバスチャンの関わった曲について言及するなら、曲の展開にリフレインパートが多過ぎるように思う。

リフや展開の練り方が雑というか、シンプルというか。

歌で無理矢理ねじ伏せるスタイル、というと解り易いのではないだろうか。

良くも悪くもセバスチャンの曲がこのアルバムの個性を明確にしている為、結構カッコ良い曲の揃ったアルバムではあるのだが、印象は薄い。

バンドとしても“My Enemy”や“Frozen”等、よりヘヴィグルーヴな方向へは向いていたとは思う。

同時に、“Riot Act”や“Get The Fuck Out”の流れを汲む“Bonehead”、“Subhuman Race”といった曲もあり、二曲のバラードのクオリティも高い。

サウンドメイクのお陰で平坦に聞こえるが結構起伏のある構成にはなっている。

今回扱った他のアルバムにも言えることだが、この頃はカラフルにサウンドを彩るのが流行っていなかったのだろう。

筆者がSKID ROWで一番好きなのは1stだったりするのだが、3枚のアルバムはどれも中途半端な印象がある。

そういう意味で言えばSKID ROW的平均点はあるか。


サウンド……グルーヴメタル

・楽曲の出来……☆☆☆

・オススメ度……☆☆☆




POISON / NATIVE TONGUE(1993)



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01.
Native Tongue
02. The Scream
03.Stand
04.Stay Alive
05.Until You Suffer Some (Fire And Ice)
06.Body Talk
07.Bring It Home
08.7 Days Over You
09.Richie's Acoustic Thang
10.Ain't That The Truth
11.Theatre Of The Soul
12.Strike Up The Band
13.Ride Child Ride
14.Blind Faith
15.Bastard Son Of A Thousand Blues


ヘアメタル=POISON。

言わずと知れたド派手かつおバカロックンロールバンド。

ヘアメタルの語源はこの人達のことではなかろうか。

わりと全員イケメンで、かつ演奏が下手クソだったので、WINGER以上にバカにされた。

ルックスばかりに目が行きがちだが、音楽性に目を向けてみよう。

1st「LOOL WHAT THE CAT DRAGGED IN」(1986)、2nd「OPEN UP AND SAY… AHH!」(1988)では期待通りおバカで下手クソだが底抜けに明るく能天気なロックンロールを展開している。

しかしヒットしているだけあって、実はソングライティングのセンスはある。

ライヴやPV等ルックスで耳目を集め、シンプルなロックンロールの中に小技を効かせる、方法論としてはKISSに近いか。

続く3rd「FLESH & BLOOD」(1990)では一気に演奏力が向上する。

歌詞もかなり真面目なものが増え、普通の人でも聴ける内容になった。

そして、ギタリストをC.C. デヴィルから超絶上手いリッチー・コッツェンに交代してリリースされたのが今回取り上げる4th「NATIVE TONGUE」だ。

ギタリストの交代は個人的には大成功だと思う。

なんせ上手い。

しかも、音楽的な懐が深い。

バンド全体の音楽的ポテンシャルが一気に向上した。

バンドを離れる直前のC.C. デヴィルの姿はyoutube等で確認出来るが、明らかにバンドをよりパンキッシュな方向へと誘導しようとしていた。

それに対してこのアルバムの内容は、よりトラディショナルなサウンドを指向している。

ブルーズやファンク、ゴスペル等の要素が盛り込まれ、バンドとC.C.の音楽的乖離は明白だ。

ここまで来るとルックスだけのバカバンドという枠で語るのは不可能だろう。

バンドとしても、ミュージシャンシップを示したかったに違いない。

90年代初頭までのインタヴューを見ると、ヴォーカルのブレット・マイケルズはかなりジョン・ボン・ジョヴィを意識していたようなのだが、POISONとしてはBON JOVIの「KEEP THE FATH」(1992)のような役割をこのアルバムに期待していたのだと思う。

比べるのも何だが、残念ながら説得力で遠く及ばず。

期待通りの成功は得られなかった。

このバンドの個性や勢いの部分がどこにあったのか、その辺りを考えればこのアルバムはやはり地味だ。

リッチーの加入はPOISONの毒味をマイルドにしてしまった。

ブレットの歌にもう少し説得力があれば。


サウンド……ブルーズロック/アメリカンハードロック

・楽曲の出来……☆☆☆

・オススメ度……☆☆☆




WARRANT / DOG EAT DOG(1992)



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01.
Machine Gun
02.The Hole In My Wall
03.April 2031
04.Andy Warhol Was Right
05.Bonfire
06.The Bitter Pill
07.Hollywood (So Far, So Good)
08.All My Bridges Are Burning
09.Quick Sand
10.Let It Rain
11.Inside Out
12.Sad Theresa



POISONと同系のバンドといえばWARRANT。

2番煎じと呼ばれることもある。

WARRANTもPOISONと同じように派手なルックスに明るいロックンロールで人気を博したバンドだ。

WARRANTもアルバム毎に成長を感じさせる。

と言っても二枚なのだが、演奏力や表現力の向上は1st「DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH」(1989)と2nd「CHERRY PIE」(1990)を比べれば明らかだ。

しかし音楽性をレイドバックしていったPOISONとは違い、WARRANTはヘヴィグルーヴ路線へと接近した。

プロデューサーにSKID ROWの2ndを手がけたマイケル・ワグナーを迎え、サウンドのイメージもまんまSKID ROWの「SLAVE TO THE GRIND」を狙ったという。

非常にわかりやすいが、WARRANTはここにシアトリカルな表現等も盛り込んでおり、“April 2031”や“Andy Warhol was right”等はSAVATAGEやMARILLIONを思わせるような楽曲である。

アルバムを通して聴くと、SKID ROWっぽい曲と、細やかでシアトリカル/ドラマティックなアレンジの曲が混在しており、どちらにせよそれまでのポップでキャッチーなイメージとはかけ離れている。

個人的にはマイケル・ワグナーのサウンドはドラムが薄く、ヘヴィな音像にはそぐわないと感じる。

いっそ後者の路線に絞った方がアルバムとしては面白かったかもしれない。

POISONの二番煎じにしておくには勿体ないバンドだ。

ソングライティング能力の高さは素直に認めるべきだが、やはり“バンド“としての個性や素養というものがある。

“Machine Gun”をリーダートラックにしたのが間違いだったのかもしれない。


サウンド……ヘヴィメタル/シアトリカルメタル

・楽曲の出来……☆☆☆☆

・オススメ度……☆☆☆




L.A. GUNS / VICIOUS CIRCLE(1995)



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01.Face Down
02.No Crime
03.Long Time Dead
04.Killing Machine
05.Fade Away
06.Tarantula
07.Nothing Better To Do
08.Chasing The Dragon
09.Kill That Girl
10.I'd Love To Change The World
11.Who's In Control(Let 'Em Roll)
12.I'm The One
13.Why Ain't Bleeding
14.Kiss Of Death


L.A. GUNSと言えば、GUNS N' ROSESの立ち上げ時のメンバー、トレーシー・ガンズを中心に元GIRLのフィル・ルイスや元W.A.S.P.のスティーヴ・ライリー等のメンバー構成でデビューしたワイルド系ロックンロールバンド。

ワイルドな1st「L.A. GUNS」(1988)でデビュー。

より聴き易くなった2nd「COCKED & LOADED」(1989)からはのシングルヒットも出て人気を確立。

3rd「HOLLYWOOD VAMPIRES」ではよりスリージーにレイドバックしたサウンドを聴かせた。

が、1995年に発表した4th「VICIOUS CIRCLE」は全く違う方向性を持ってシーンに登場した。

殆どのバンドがトレンドを追いかける中、L.A. GUNSはパンクを通りこしてハードコアなエッジをこのアルバムに持ち込んだ。

ある意味で非常にオルタナティブサウンドである。

実は筆者はこのアルバムだけ完全な初見であったのだが、こういうアプローチで来るとは思っていなかった。

3rdまでの流れでいけば、POISONやBON JOVIのような、トラディショナルな、もしくはアーシーなサウンドになっているのだろうと予測していたからだ。

このアルバムで聴けるサウンドは、1stよりもさらに激しく、ヘヴィさよりもスピードやワイルドな過激さを感じる。

曲の作りこそスリーコードだったりもするが、リフで押しまくる曲も結構あり、演奏にも気合いが入っている。

“Chasing The Dragon”等、らしい曲もあるにはあるが、“No Mercy”等1stのサウンドが好みならこのアルバムに収録された楽曲は多いに気に入ることだろう。

ルーズでスリージーな側面はあまり見られず、前ノリでタイトに決まるリズムが気持ち良い。

元々そこまで注目度は高くなかったと思われるのだが、そこからさらにマニアックなサウンドスタイルへと移行した為に、評価を下げるもクソも知名度自体が相当低くなったのではなかろうか。

せめてL.A. GUNSのファンだけでも再評価してあげたいアルバムだ。


サウンド……ハードコア/ハードロック

・楽曲の出来……☆☆☆

・オススメ度……☆☆☆




EXTREME / WATING FOR THE PUNCHLINE(1995)



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01.
There Is No God
02.Cynical
03.Tell Me Something I Don't Know
04.Hip Today
05.Naked
06.Midnight Express
07.Leave Me Alone
08.No Respect
09.Evelangelist
10.Shadow Boxing
11.Unconditionally


“More Than words”のヒットで一気にブレイクしたVAN HALENアメリカンハードロックバンド。

音の定位までVAN HALENなのは恐れ入るが、VAN HALENよりも圧倒的に器用なのが特徴である。

3rd「Ⅲ SIDES TO EVERY STORY」(1992)ではコンセプチュアルなテーマで明確な個性を提示し、完成度の高い楽曲は高い演奏力と相まって日本やイギリスでの人気を確固たるものとした。

そのまま個性爆発路線を突き進むかと思われた1995年に発表されたのが今回取り上げる4th「WATING FOR PUNCHLINE」である。

どうしてこんなにシンプルに纏めてしまったのか。

非常に地味である。

相変わらずみんな上手いし、元々VAN HALEN型なのでグルーヴも充分。

だが、力技でねじ伏せられる程の個性がないから、2nd以降の作曲能力の高さが評価されたバンドなのだ。

サウンドはソリッドでタイトだし、リフもカッコ良いものが沢山ある。

しかしまぁ、もうちょっと色々やってみても良かったのでは、と思ってしまうくらいにとにかくストレートなサウンドのアルバムだ。

ストレートである分、ファンク+メタルというスタイルではレッチリを思い浮かべてしまうし、アメリカンなノリのハードロックをやればVAN HALENが頭をよぎる。

多才なのと器用貧乏は紙一重なのだと思い知らされる一枚であった。


サウンド……アメリカンハードロック/ファンクロック

・楽曲の出来……☆☆

・オススメ度……☆☆




QUEENSRYCHE /HEAR IN THE NOW FRONTIER(1997)



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01.
Sign Of The Times
02.Cuckoo's Nest
03.Get A Life
04.Voice Inside
05.Some People Fly
06.Saved
07.You
08.Hero
09.Miles Away
10.Reach
11.All I Want
12.Hit The Black
13.Anytime / Anywhere
14.spOOL



今回取り上げる中では一際異彩を放っているQUEENSRYCHE

そう、このバンドはL.A.メタルに擦りもしないプログレメタルバンドである。

なぜこのバンドを取り上げるのか?

このバンドはルックスがアレだったので、どうやらヘアメタルとして認識されているようなのだ。

1990年発表の4th「EMPIRE」からのシングルがコンパクトでヒットしたことも影響しているかもしれない。

で、問題のアルバムが今回取り上げる6th「HEAR IN THE NOW FRONTIER」だ。

発売当時は正統派のプログレメタルバンドとして名を馳せていたバンドがシーンに迎合した!と批難された一枚。

今改めて聞き直してみようと思う。

結論から言えば、最近のアルバムよりずっと良い出来のアルバムだ。

ギタリスト、クリス・デガーモの脱退はバンドにとって本当に痛手だったのだと痛感させられる。

リフはグルーヴィなものになっているし、リズムもグルーヴ重視、サウンドも乾いたものになている。

しかし、今聴けばアレンジ等はかなり練られていることがわかる。

はっきり言って、5th「PROMISED LAND」(1994)よりよっぽど解り易いのではないか。

ギターワークも今聴けば充分扇情的だ。

クリス・デガーモとバンドを脱退したヴォーカリストのジェフ・テイトはもう一度一緒にアルバムを作って欲しいと思った次第。


サウンド……オルタナティブメタル

・楽曲の出来……☆☆☆☆

・オススメ度……☆☆☆☆




・総括


今回は敢えて評価の低いアルバムばかりを聴き続けてみたのだが、結論から言うと世間の評価はほぼ正しい。

どんなに力作であっても、WARRANTなら「CHERRY PIE」を聴いて欲しいし、“Talk Darty To Me”も聴かずにPOISONは語れないのだ。


どんなバンドであろうと、音楽で食っていくという大きな目標、夢に向かって四苦八苦し、ようやく他人から求められるようなスタイルを確立してきたのだ。

時代というのは時として残酷であり、そのようやく手に入れた成功を一瞬にして奪い去ってしまうこともある。

そうした状況の中で、積み上げてきた努力を自ら否定し、前へと進もうとしたこれらのバンドには、まず敬意を表したい。

敬意を表した上で評価を下させて頂く。


今からでも聴く価値があるのは、MOTLEY CRUEの「MOTLEY CRUE」とDEF LEPPARDの「SLANG」だけだ。


POISON、WARRANT、L.A. GUNS、QUEENSRYCHEについてはメタルファンなら聞き直すべき。


SKID ROW、WINGERはバンドのファンなら買っても損はしない。


RATTDOKKEN、EXTREMEについてはコレクション目的のマニア、ギタリストのフリーク、その他特殊な事情がなければ聴く必要はない。


この企画をやるに当たって、一応前後のアルバムも聞き直した上で言えることは、結局バンドがどれだけ本気なのかということだ。

勝負しにいっているアルバムは、やはりそれ相応に聴き応えがある。

また、MOTLEY CRUEやPOISONのように、単純にメンバーチェンジ後のメンバーが前任者よりも上手い場合も良い結果に繋がるようだ。


しかし、せっかく手に入れた顔と名前を放棄するのは非常に勿体なく思うのは筆者が売れないバンドマンだからなのだろうか。


こんなに低評価の作品ばかり聴き続けたので、次回こういう企画をやる時はベタな名盤特集をやろうと決意する今日この頃である。








おれがやってるバンド、PSYCHO kui METALLICSのライヴの予定です。

このブログは趣味に走りすぎていて何をやっている人かまったく解らない、と言われましたので。

2/12 京都 MOJO
2/15 樟葉 シャイングホール
2/20 心斎橋 Footrock & Beers


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